表札に染み込むオイルの量
先日完成した表札です。
神代楡(じんだいにれ)で制作する「目立たないシンプル表札」という表札です。
通常、私の作る表札には天然オイルを3回塗り込みます。
それぞれの樹種によってオイルの吸い込み方が違いますが、神代楡はベスト3に入るくらいの吸い込みです。
ふと、どのくらいのオイルが吸い込まれているのかを量りたいと思い、今回計量しました。
ただ、今回の表札は20cm正方形の大きなサイズ。このサイズでどのくらいの重量変化があるかという実験です。
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まず文字の切り抜きと研磨が終わり、水引きをして毛羽立たせて乾燥ののち再研磨。その状態で計量です。
オイル塗布前 468g
最初に塗るオイルは下塗り用のオイル。次に塗る保護オイルよりもシャバシャバと粘度が低く、木により浸透して反りや割れを予防してくれるオイルです。
みるみるとオイルが浸透する
特にこの木口面はものすごい吸い込みで、塗った端からオイルが染み込みます。10回以上、塗っては染み込みを繰り返します。
神代という木材は何百年も地中で眠っていた木。
長い眠りから覚めて、ものすごい渇きをいやしているかのようにオイルが染み込みます。
1回目塗布直後 482g
ようやくオイルも染み込まなくなり、表面を耐水ペーパーでウエットサンディングします。こうすると導管に木粉とオイルが入り込み、仕上がりがよくなります。
一定時間置いたのちに拭き上げ。
この時点で14gのオイルが浸透していることになります。
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たっぷり吸いこんでいるため2日間乾燥ののちに計量です。
2回目塗布前 479g
この乾燥中に約3g減りました。
今度は2回目のオイル。屋外用のクリアーオイルを塗ります。 1回目ほどの浸透はしないのですが、それでも何度もオイルが染み込みます。ウエット研磨、ふき取りと同じ作業を繰り返しまた計量。
2回目塗布後 480g
2g増えました。
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翌日3回目のオイル塗布。
最後は限界ギリギリの塗布となり、今度は導管からのオイルの吹き出しがあります。乾燥前に何度もふき取らないと見た目が悪くなります。
最後3回目の塗布後は479g。2回目塗布後よりも減っていますが、乾燥して目減りしている分があるので、ほぼ変化がないという事です。
実験の結果。
20cmサイズの神代楡の表札がオイルを吸い込む量は約11gでした。
たくさんのオイルが木に染み込み、余分なものは蒸発しました。残った成分が板の反りや割れ止め・紫外線や雨の保護につながっているはずです。
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今回の表札はサイズが大きいために2枚の板を剥ぎ合わせています。反りの心配もあるため裏に金具を付けました。
オイルがどのくらい吸い込まれるのか?と、いつも思っていた疑問を実験により可視化することができました。
シンプルな表札ですが、お届けするまで結構手間がかかっているのです。きっと自然のチカラが表札を強力にしてくれることでしょう。